このオペラは大正〜昭和初期に浅草で上演されていた日本語によるオペラ、俗に言う「浅草オペラ」のために作曲されたものです。「浅草オペラ」ではヴェルディの《椿姫》やビゼーの《カルメン》などの外国のオペラも数多く上演されていましたが、当時の日本の作曲家による新作オペラもさかんに上演されていました。《葛飾情話》もその一つで、永井荷風の台本により、菅原明朗(すがわらめいろう)が作曲しました。菅原明朗は1897年に兵庫県に生まれ、1988年に東京に没した作曲家で、瀬戸口藤吉に師事、戦前に新興作曲家連盟を設立したり、タケヰ楽団というオーケストラの指揮者をしたりして活躍した人です。戦後はイタリアに渡ってイタリアの現代音楽に触れ、その影響を受けた音楽を次々と発表していました。《葛飾情話》は1938年(昭和13年)に浅草オペラ館で上演され、評判となった作品だそうです。 |